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ポール・ボキューズ逝く

先週、丁度帰国したころ、フランスの名コック、ポール・ボキューズが91歳で死去したニュースが流れた。
リヨンで、彼の名前を冠したレストランを経営していたほか、コックの職業を大いに高めた功績がある。

一度、このレストランに足を運んだことがある。南仏に住んでいたころだから、20年以上前のことだ。たしか、亡きつれあいのお祝いごとがあって、日本から来た娘夫婦も一緒だった。

その時のメニューが残っていた。まだユーロになる前、フランの時代である。金額がユーロ換算でいくらになるやら、もう計算する気もない。

710フランというメニューでは、最初にSoupe aux truffes noires V.G.E.とある。1975年にエリゼ宮、すなわち大統領のために考案されたスープというから、VGEは当時の大統領、ヴァレリー・ジスカールデスタンである。

このメニューを選んだのかどうか、何を食べたのか全く覚えていないのだが、少なくとも、こってりした味であったことは記憶している。当時はまだ若かった。いまではとても消化できそうにない。

大きなメニューをもらってきたのだが、このメニューに挙げられた料理は、きっとフランス料理そのもの、というものなのだろう。

料理が供されている途中、大きなシェフ帽をかぶったポールが、客席をまわって歩く。記念撮影にも気楽に応じてくれる。メニューと、ジスカールデスタン大統領夫妻が来店したときの記念写真を添えて、お客にプレゼントしてくれる。こちらとてしては、めったに来れないレストラン、ありがたい記念品だ。

あなた、このお店にも連れて行ってくださったわね、と遺影に言う。いい思い出だった。

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