SSブログ

フランス、こんなこと(2)食事時間

今度の滞在で戸惑ったことの一つが食事時間である。

到着した日、空港を出たのは午後4時すぎ、パリに入るまでは順調で5時台には到着するか、と思いきや、パリ中心地の渋滞のすごさ、数センチ単位でも動かないタクシーに、セーヌ左岸の家に到着するのに2時間はかかった。
7時、もう夕食の時間になるのかも、と恐縮していると、迎えた甥が、いや、今、自分だけしかいない、夕食はずっとあとだし、いつも10時すぎになるよ、という。

空腹は感じないけど疲れているので、10時まで休むことはできないのか、と第一のショックを受けた。
その気持ちが伝わったのか、8時半ころに、テイクアウトのお寿司と和風サラダで夕食となった。
フランス人の家でお寿司の夕食か、と不思議な感覚を覚えたが、ヴェジタリアンの母と娘はかっぱ巻き、そうではない甥と私は握り、それぞれに食べられるものがあってよかった。

朝はてんでばらばらに食べる。甥は7時すぎに何も食べずに仕事に出かけると言っていたが、私が起きて、台所にいたので、コーヒーをいれ、パンを焼いてくれた。

結局、昼を家で食べるというのは、客のいる昼食会で、1時ごろから食べ始め、3時過ぎまで続くという感じであった。
夕食は早くて9時という感じだった。

食事のスタイルにも、日本の常識ではあわない。日本では、一日のスタートである朝食はしっかりと食べる、ということで、私は食べないけれど、トーストにハムエッグ、サラダ、スープなど、フランス人にみせるとディナーじゃない、という内容だ。和食であれば、魚の干物がでたり、蒸し野菜がでたりと、あんなにたべられるはずないじゃない、と一部のフランス人には不評である。

こちらでは昼に重点がおかれている。それはそれでいいのだが、夕食がなにしろ遅すぎる。
夕方早くに戻って、夕食待ちの私は、もう寝る時間かというところでの夕食に対応できず、夕食抜きで失礼する、という日があった。特に昼が大きいと夜はいらない。

昼が重ければ、夕食はその分遅くなる。もうシャワーを浴びて寝ようかしら?と思っている9時すぎに台所で物音がし始め、私に夕食は食べるか?と聞いてくる。
今から食べると、消化もしないし、太りそうだし、と迷うところだ。
2回に1回はパスした。

日本で夕食は何時にとるの?と聞かれ、5時には準備を始めて、6時には食べ始めている、というと、びっくり仰天される。まだお茶の時間じゃない、というわけだ。
夏場はそんなに早くに食べることはないけれど、冬は、日の暮れも早いし、外の仕事はできないし、家のなかでも寒くてやる気がないから、早めに食事をし、お風呂に入り、ベッドルームに引き上げる、と説明すると、えっーと驚かれる。
結局、一人暮らしの無為が故であること、外出もままならない山の中の暮らしがよくわからないのかもしれない。

日本だって、全員が働いている人の家庭、学生のいる家庭、老人と同居の家庭、いろんな家庭のスタイルで、食事の時間というのは差があるから、フランス人の家庭だからというくくりは当てはまらないのだけれど、いかに自分が日本人化してしまったのか、つくづく自覚した次第である。


nice!(0)  コメント(0) 

フランス、こんなこと(1)

今回のフランス行きは、クリスマスを知人宅で過ごすことがメイン目的であった。
けれども、それプラス、クリスマスの本来の意味、生誕祭を祝うため、教会のミサに与ることもある。

クリスマスの家庭行事は、24日イヴは家庭での会食だ。今回は少人数だったが、いつもであれば、もっといろんな人を招いている。だから、深夜ミサ、だいたい9時ごろ始まるが、これにはあずかれない。
クリスマス当日のミサは、朝と夕がある。朝は9時とか10時、夕ミサは午後7時などだ。これは教会によって違うから要チェックだが。
当日の家庭の予定としては1時くらいからの昼食会がある。12時すぎるとぼちぼちと客が現れるから外出するわけにはいかない。

ということで、知人は私に25日の夕ミサへ行こうと提案してきた。歩いていけるサン・ジェルマン・デ・プレ教会ではどうか?と聞く。
私に異論はない。ノートルダムが火事にあって、もしパリ代表ということになれば、サクレクールとかマドレーヌなどが有名だろうが、交通の便がない今、至近のサンジェルマンも著名だし、どんなミサなのかみてみたい、と思う。

有名教会の一つだし、きっと大勢の信者が集まるだろうと、席を確保するために少し早目に行く。
7時前15分というところなのだが、ほとんど人はいない。もしかしたらミサはないのかも、と思うほどだ。
なんのデコレーションもない。普段通りの聖壇のつくりである。
ただ、この教会の売りの一つ、パイプオルガンが大きな音で演奏している。

入り口で配られているミサの式次第も、白黒の簡単なもの、華やかさなどみじんもない。
まず、聖壇の前などにふつうなら飾られている、生誕の場がない。この教会では、回廊にあるマリア像のところに極シンプルなクレーシュがおいてあるだけだ。

2年前のクリスマスでは、ノートルダム、フランシスコ・ザビエル教会、などいくつかの教会をみてまわったけれど、大がかりなクレーシュが飾ってあった。

ミサの時間になると、さすがにいくらかの人が集まった。
私たちの席の前には、中国人とおぼしい若い女性が2人、席を占めた。一人は毛皮のコートを羽織って、なかなかお金持ち風でもある。

神父様は一人で現れた。本当に一人きりで、侍史はだれもいない。ひょいひょい急ぎ足で聖壇にあがられる。
同時にパイプオルガンが大きな音を出して響く。人が音を吸収できるほどいないからか、やたら大きい。

こんなことを書けば、一種の偏見になるのだろうが、外国人だ。同伴者はその発音からマダガスカル人ではないか?とあとで言っていた。
そもそもがフランス語でのミサは数年ぶり、定型のお祈りも、お説教も聞き取れない。

前の席の中国人女性、立ったり座ったりはほかの人と同調できるのだが、どうも信者ではなさそうだ。
主の祈りのあと、周囲の人とキリストの愛をわかちあう。親しければハグをしあい、親しくなければ握手や会釈、となる。
彼女らは何もしない。そしてだれも彼女らに分かち合いをしない。
私は後ろからちょっと肩をつついた。一人が振り返る。ハグはしないけれど、すこし気持ちのこもった握手をした。隣にいるともも彼女らに親しみのこもった挨拶を交わす。

きっと彼女らはパリのクリスマスを楽しみに滞在しているのだろう。たまたまこの教会を、きっと有名だから感動深いクリスマスミサであろう、と期待してきたに違いない。

ミサの終わりは、クリスマス聖歌のIl est ne le divin enfantで締めくくりだ。
カトリックのミサはどうしてもっと知られている讃美歌を歌わないのかしら?といつも思う。

彼女ら、きっとがっかりしているわね、と自分の気持ちを彼女らに代弁させていう。
知人もがっかりしたミサだったね、と同感している。
そもそも彼は洗礼は受けているものの、プラティカン(きちんと教会に通う人)ではないとのこと。いろいろ考えるところがあるのだそうだ。

外国人神父が悪いというのではないが、フランス人の神父はとても数が少ないという。召命というけれど、神の教えに進もうという人は本当に少なくなったとのこと。
魅力がないのね、といいつつ、こういうミサの在り方では、信者の興味・関心も呼べないだろうし、教えがわからなければ、教理に惹かれることもない。

結局、私に付き合ってくれたのだが、帰宅して、変に宗教談義というのか、カトリックへの思いを話し合ったのだった。
nice!(0)  コメント(0) 

広い家に泊まる不都合

今回、フランスで泊めてもらったのは、亡くなった代父の甥の家である。
これまで、食事には数回招かれていたものの、泊まるというのは初めて、ちょっと以上に緊張した。
パリの中心地のアパートメント、200平米以上あるというが、ゲストルームはどうなっているのだろうか。

きちんとしたゲストルームはなかった。入口近くの甥の書斎が私にあてられた。私にというより、そこをゲストに使わせるようになっている。甥のデスク、パソコン、本だな、書斎として実際使っているようだが、ソファーをベッドに仕立て、また、部屋の奥にはシャワーとトイレ、洗面台がついている。
しっかり独立した部屋だ。

この家は、サロンがとても大きく、それに続いて、食堂もある。食堂から続きに台所があるが、これも広い。そしてその奥がプライヴェート部分になっていて、夫婦の寝室、子どもたちの部屋、子どもたちのバスルームなどがあるようだ。

これだけ広いと、人気が感じられない。だれがどこにいるのか、特にプライヴェート部分に引っ込まれてドアでも閉まっていると、物音もしない。

夫婦に子供といっても成人の2人、それぞれが自由な生活だ。朝、朝食が一緒というわけでもない。朝、甥は7時すぎに朝食なしで出かける。甥の妻は見送りをすることもない。
私は一人、いつ、どういう食事をとっていいのか、困ってしまった。
お茶を飲むなら、ティーポットでお湯を沸かし、とかコーヒーメーカーもこれよ、と教えてもらったけれど、どうも自信がない。
誰か起きてきてくれないか、と奥をのぞくけれど、しんとして物音ひとつない。
となると、こちらも音をたてるのをはばかる。

日中においても、鍵をもらったので出入りは自由だが、どこに行ってきます、何時頃帰ってくるつもりです、と言いたくても、だれも出てこない。
帰ってきても同じだ。だれか在宅しているのかどうか、気配もしないのだ。

日本だったら、玄関に履物があるかどうかでわかるけど、とか、広くて声が聞こえない家なんて、いまどきないよ、などと思う。

パリのアパートもだが、ソローニュの別荘はもっと広かった。20ヘクタール以上ある敷地、家屋は550平米あるのだそうだ。
上階に家族の部屋があるというが、そちらは案内されず、下のゲストルームの一つに案内された。ゲストは私だけだ。真ん中に大きな暖炉を供えたサロン、ゲストルームの反対側が食堂と台所だ。
かくれんぼでもすれば、だれも鬼になりたくないような家だ。階段はいくつかあり、隠れた小部屋もありそうだ。
それに、プールのそばの小屋や、甥の妻が陶芸をする作業場、それにロバのための小屋もある。

Je vous laisseとゲストルームに案内されると、もうあとは一人きりという状態だ。
甥はどこにいったやら、暖炉のための薪を準備しているのやら、ロバにエサを与えにいったのやら、これなら、ヒッチコックのスリラー映画だってできそうだわ、と一人でどうしようもない。

私はここにいます、とはっきりさせるため、サロンのピアノを弾くことにした。ひどい音でも、聴く人もいないような状態だから、迷惑をかけようがない。
そうすると、名演奏に惹かれてか、サロンの外にロバが現れた。甥がつれてきたようだ。
このロバは、代父の息子が南仏から連れてきたものだという。バンザイとチャーリーという名なのだそうだ。

生き物は苦手なのだが、甥が彼らはおとなしくて、触っても平気だよ、というので、おそるおそるさわってみる。久しぶりに人間の感触を喜んでか、わたしにすり寄ってくる。
エサを期待しているんだよ、とポケットあたりをさわるロバに、甥から渡されたエサをやるといよいよ迫ってくる。

ロバはいいよ、ほったらかしでいいからね、と甥は忙しくうごきまわる。まずは暖炉を焚かなければ、と大きな枝を数本、暖炉に投げ込む。
日本の小型の暖炉しかしらない私に、大型の暖炉でダイナミックに火をおこすコツなど教えてくれる。

そうしているうちに、甥の妻も着いた。いつ到着したのやら、車の音も聞こえず、入ったのも台所の入り口だったらしい。

そのあとも、私の居場所は、火を絶やさないサロンに限られていた。
せまいところで人との接触が多すぎるというのも気を使うけれど、無人に近い状態にいるのも大変に困惑するものだった。
nice!(0)  コメント(0) 

いじめ解決策

フランスで泊まった家の息子は29歳、イギリスで働いている。

これまで会ったのは数回にすぎないけれど、なんだかとっても親しみをもっている。
最初にあったときは強烈だった。まだ彼が学生のころだったと思う。
金髪に染めて(元来は栗色)、パンクのような突っ立った髪型、上は90歳から下は60歳というような食事会のなかに一人異端児として存在していた。
私との会話も、まずはイエス、ノーをはっきりさせてくれ、と迫ってくる気の短さだった。

それから何年になるのだろう。すっかり大人になっている。髪も自然の色に戻しており、ちょっと髭があるのが気になる程度だ。

お茶を一緒に、とサロンに紅茶を運んでくれた。
Brexiteのあとも、ロンドンに残るのかと問うと、イギリスのほうが住みやすいからね、なんせ14歳のときに放り出されて、それ以来、ずっとロンドン住まいなんだから、という。
放り出されて、という表現が気になった。

14歳の時となれば、本人の意志より親の意向なのだろうが、それからずっと、大學もイギリスとなると、それが彼の選択でもあったのだろう、と思っていた。

なぜ、イギリスの学校にしたのか、ずっと疑問だった。彼の妹も同時にイギリスの学校に変わっているし、ボーディングスクール(寄宿制)にいれたのは、国際的教育を与えたいという親の考えなのだろうと思っていた。

それが学校でのいじめ対策であったことを、今回初めて知った。

24日の夕食に招かれたロシア人夫妻、常はロンドン住まいである。会話の中で、彼らの子どもはボーデイングではなく、自宅からの通学であることはわかった。
学校事情など、息子や娘がいろいろな経験談を話している。
その中で、母親が、フランスの学校で、自分がポーランド人だったがゆえに、息子と娘がいじめの対象となり、イギリスの学校に入ることでいじめから抜け出したのだと説明していた。

フランスの学校におけるいじめも、けっこうきつくて、しんどい思いをした話はよく聞く。
ここの息子に娘は、頭もいいし、そういういじめの対象になるとは思いもしなかった。

彼らの両親が、イギリスでの学費を負担できる財力があるがゆえに、親の意向なり見栄もあろうか、と考えていたのだが、いじめが背景にあるとは思わなかった。

イギリスのボーディングスクールではどうだったのか、そこまで聞く時間はなかったけれど、そこではうまく適応できたのだろう。

もうフランス語より英語のほうが楽だよ、という息子、すっかり英国風になったのか、クリスマスプレゼントには紅茶をくれた。

nice!(0)  コメント(0)