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「佐川君からの手紙」

昨日の朝日新聞朝刊に載っていた死亡欄は、いささかショックだった。
4人の死亡記事があった。一人は俳優、タレントの渡辺徹さん、このニュースは、朝からテレビなどで報道していたのでもう知っていた。

残りの3人、ミレーヌ・ドモンジョさん、フランスの俳優さんだ。
ドウス 昌代さん、ノンフィクション作家。
そして佐川 一政さん、作家である。
佐川氏については、「パリ人肉事件」のタイトルが出ている。死亡されたのは11月24日。
73歳での死亡という。

ちょうど、サッカーで盛り上がっている今、佐川氏の死去について触れるメディアはなかった。
しかし、私は彼の死を知って、とても衝撃を受けた。
新聞記事を引用するなら、「81年に留学先のパリで知人のオランダ女性を射殺し、遺体の一部を食べたとする「パリ人肉事件」で知られた。精神鑑定で心神喪失状態だったと判断され不起訴処分となり、84年に日本に送還された。」「帰国後は作家として活動し、「蜃気楼」「少年A」などの著作を発表した」とある。

そして「劇作家の唐十郎さんが事件を題材に書いた小説「佐川君からの手紙」は83年に芥川賞を受賞した」という。

私はこの佐川氏から手紙を受け取ったことがある。私宛の手紙ではない。
職場へあてた手紙であった。宛先に個人名が記されていなかったり、部局名がはっきりしないとき、郵便物のほとんどが私に回されてきた。
差出人に彼の名前があったかどうか、覚えていない。
白い封筒にはいった封書、縦長の封筒の質はよかったと思う。
何気なく、特別の注意も払わず、ハサミで開けた。
白い便箋、字が上手であったかどうか、覚えていない。きちんとした手紙だったが、すぐに「パリ人肉事件」の当事者からの手紙であることに気づき、手紙を持つ手が震えた。

内容は?覚えていない。何が書いてあったのだろう。
とんでもない人から手紙が来た!!
どうしたらいいのだろう?

判断にこまった私は、この手紙を日本人の上司(上下の区別はなかったから、ただ先輩なのかもしれないが)に届けた。
彼は「佐川氏からの手紙です」という私の緊張した言葉に、すぐに佐川氏がだれであるか理解した。
「誰かほかのひとにこの手紙のことを告げましたか?」「いいえ、だれにも」
「僕があずかりますから、人には話さないでください」

それでおしまいだ。誰にも言わず、胸にしまっていた。

しかし、のちに、友達の家を訪れたとき、友人のご両親と少しおしゃべりをしたが、その時、「佐川さん、パリに留学してたのよね、彼のご両親とはとても親しいの。彼だって、いい子だったのに、あんな事件を起こして」、「ご自宅とは別に、どこか借りて住まわせているみたい」「これからどうするのでしょうね」などと心配げに話された。

あれから40年、どんな生活を送っていたのだろう?

職場にきた彼からの手紙は、上司がどう処置されたのだろう。その上司も2年前に亡くなられた。
彼の作品と、唐十郎氏の「佐川君からの手紙」を読み返してみよう。

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