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理想と現実、フランスも同じく

先日、フランスの社会党を称賛するような文章を書いた。
それを訂正、削除するつもりはないのだが、私が評価したいろいろな政策を、昨日読んだ本では、机上の空論、と評価されていた。
その本とは、元産経新聞パリ特派員であった山口昌子氏の「パリ日記」IIIの序文で、2022年に書かれている。
ミッテラン大統領の14年間に、おそらくは全部ならずとも、一部は実現したものと思っていたが、それはおそらく書類上(例えばJournal Officielに出ている)のことであって、例えば週35時間労働などがその一例とされている。

現地で取材された彼女の評価であるから、きっと正確なのであろう。
週35時間労働や、退職年齢を65歳から60歳への引き下げ、これが若年層の失業問題解決策として打ち上げられたのも、高級官僚(ENA出身者)の理想実現として、掲げられたものだったようだ。

そのほか、有給の年休を4週間から5週間へと、ヴァカンス好きな、労働をよしとはしないフランス人には歓迎された政策も、それによって、社会的条件が改善されたわけではない、エリート官僚(キャビア社会党」のもたらす、「机上の空論」で終わったらしい。

理想を高く掲げて、社会をリードしていくのは政治家の役割でもあるが、そう簡単に理想が現実とはならない。

その中に、移民問題(難民も含む)は仏内政のみならず、欧州全体の外交問題であり、解答がみつからない永遠の課題だ。フランスのみならずEU内で、極右、あるいは極右寄りの右派の支持率が、一定の高さを保持しているのも、反移民、反難民の根強い感情があるからだ、と書かれている。

その一例に彼女は2005年松のパリ郊外の暴動事件をあげているが、この6月末におきた17歳の少年を警察官が射殺したことによる、フランス全土にわたっての暴動がこの問題の根深さを表している。

この事件がおきたとき、私はフランスにいた。台所で朝食を食べながらテレビのニュース番組をみていたが、この射殺の場面が何度も放送された。
寄宿している夫妻が、これはひどい、と言っていることで、最初は表面だけをみていた。
テレビの画面では、17歳の少年が、警官2名に一方的に射殺された、と報道している。
そして、警官はすぐに拘束されたこと、などが言及されたとき、この夫妻は、なんていうことだ、彼(彼らではなかった、撃った警官は一人らしかった)はこれで刑務所に20年ははいることになる、というのだ。
それは当然でしょう?罪もない少年を撃ち殺したのだから、と思ったが、その後、展開は思いがけないものだった。
この少年は移民2世か、3世か、親はマグレブ出身者らしい、フランス国籍はあっても、いろんな差別、格差の対象になっていたのだろう。
そして、それを感情を一にする人々の、彼に対する同情心なのか、彼ら自身の鬱屈した感情を発露する好機ととらえたのか、各地で暴動が起きた。
その対象は公的機関、市町村役場、警察、といった建物、そして奢侈品を売っている商店などで、略奪も行われた。

そうした中で、この少年がもともと、その素行がゆえに警察の観察対象となっていたこと、無免許運転であること、レンタカーしたのがメルセデスという高級車であり、その費用、同乗者2人の存在、いろんなことが明らかになってきた。
そして、停車を命じられたことを振り切って逃げたこと、そのなかで、警察官を車で壁に押し込みそうにした画面、同乗者2名が逃亡していること、そこには麻薬の可能性も含められていた。

フランスは外国からの移住者が多い。マグレブ諸国、インドシナ半島、そして植民地として統治していたアフリカの国々、それよりも海外県、海外領土という存在すらもある。
自由、平等、博愛、憲法にある標語は立派だけれど、標語は掲げるものでもある。
厳然として残る格差、いつになれば解消するのだろう。
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