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きりきりしやんとしてさく桔梗哉

これは小林一茶の句「七番日記」だそうだ。
9月24日、朝日新聞ピーター・J・マクミラン氏の星の林に、という連載(2週間に1回、日曜日掲載)にあった。
氏によると、一茶は二万句ほどの発句を残しているとのこと、私が一茶で思い出すのは、「われときて遊べや親のない雀」くらいなものだ。

マクミラン氏はこの句を、
Chinese bellflowers
- chic and erect -
pop open in blossom
と訳している。

そうなのか、桔梗はchinese bellflowersというのか、と桔梗の英語名を知った。
ちょうど、花の終わった桔梗を刈り取るときで、あなた方はチャイニーズ・ベルフラワーというのよ、と言いながら切った。

この英訳で、桔梗は普通名詞だからいいけれど、きりきりしゃんという擬態語をchic and erect、そしてその咲くさまをpop open in blossomと表現されている。

その昔、仕事に翻訳もはいっていたころがある。
日本語から外国語にする、これは外国の事情や生活、歴史、風土、すべてを知っておかないと、なかなか適切なことばがみつからない。
そんな知識のない私にとって、日本語を外国語にするのは、至難のことで、できれば外国語から日本語のほうが楽だった。楽といっても正確に訳できたわけではないが。

氏によると、桔梗の英訳としては、上記のChinese bellflowerのほかにBalloon flowerという語もあるという。
Balloon flowerは桔梗のつぼみが紙風船のように膨らんだ形をしていることにより、咲いた桔梗はbellflowerという名前のように、ベルのような形をしており、花びらが五つに割れて、上から見ると星形になっている。

そういわれれば、桔梗の花は五角形だった、と思い出す。
しかし、「きりきりしゃん」という形容はなんともポップだ。
現代用語辞典にでてそうな表現ではないか!
花が開く瞬間をみたことはない。でもポップという表現をみると、まるでポンと音をたてて咲くような気持ちになる。

とても凛々しい花に思えるが、わが庭の桔梗は、庭の持主に似たのか、咲くころには花の重みか、首からだらりと力なく咲く。
現在の桔梗は、ずいぶん品種改良がなされているようなので、一茶の時代の桔梗はもっときりりと咲いていたのだろう。

このマクミラン氏の「星の林に」は、多くは昔の和歌が多いけれど、和歌、短歌、俳句、そしてたまに詩などを英訳して、解説している。
詩歌翻遊とされているが、本当にその詩歌の本筋をついている。

過去に「新しき年の初めの初春の今日降る雪のいや頻け吉事」(大伴家持)を訳していらしたが、その解説で初めて新しき年と初春も重なりの意味をしる、という次第だった。
私もきりきりしゃんとしなければ。
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