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姉との共通項

来週、姉と会う。これまでの人生を語りたい、という彼女の希望だ。
さあ、姉とどんな会話をしよう、と思うとき、われわれの共通項を考えた。

それは父である。母が異なるということは、われわれ二人の遺伝子の共通項は、父の存在となる。

姉と一緒の生活は短かった。彼女が高校生のころ、同居したような気がする。
それ以前は、姉は祖母、叔母とその娘、と一緒に生活していた。
どういういきさつがあったのか、幼い私に知りようもなかったけれど、父と母、そして実姉と私、それに弟が済んでいた家を増築し、姉、祖母、叔母にその娘が同居した。
いや、もっと家族がいた。いつからなのか、いつまでなのか、大叔母、それに父の姉である伯母もいた。

ときは前後していただろうが、伯母はあるとき、縁あってある男性の後妻として嫁いでいった。
その嫁入りの日、家族のなかの女たちはみな留めそで姿であった。一瞬、母がどこかへ行ってしまうのか?と思ったことを覚えている。どこかへ行ったのは伯母であった。
伯母がいなくなって、私は母がずいぶん楽になったのだろう、と子供心に思ったことも記憶にある。

そのとき、姉がいたのかどうかは覚えていない。

同居し始めた姉は、こわい存在だった。高校生で反抗期であったのだろう。まず、口をきかない人だった。制服姿で、与えられた増築部分の自分の部屋からあまりでてこない。
私とどういう関係にあるか、など、だれも教えてくれず、姉から声がかかることもなく、私が何か言うこともなく、こわい存在だった。
特に母との会話がないことには気づいていた。母をきらっているのだな?と思う雰囲気があった。

しかし、あとで聞いた話、姉から直接ではないが、父と母が結婚する話のきっかけは姉が作ったのだとか。姉が幼稚園生のとき、母がその幼稚園の先生をしていて、姉が慕っていたのだとか。
それで父親に再婚の話がでたとき、幼稚園の先生である母を推薦したのだという。
反抗して、口もきかない姉が、実は縁談のきっかけを作ったとは!と驚いたけれど、話は微妙に違うらしい。

母を異にする我々、姉は決して母を悪くは言わない。母と生活を共にする期間が短かったこともあるだろう。
不思議なことに、共通項の父に対しての発言もお互いにしない。
父に対する思いがまったく異なっているのかもしれない。
姉にとって、父は若い男性だった。もちろん、だんだん年齢は加わっていったけれど、私にとっての父は中年から老年の記憶しかないけれど、姉にとっては青年期からの記憶があるのかもしれない。

姉の母は、姉にとって弟になる子を出産し、その産褥の問題で死亡した、という。
父はこの先妻について、どんな感情を抱いていたのか、後妻の子である私にそういう感情をみせたことはない、と言いたいが一度だけある。
それはあるとき、私の不注意で、姿見を壊したときだ。
割と立派な姿見で、鏡も上質、茶の間の小さなタンスの上に置かれていた。
ある日、私がバランスを崩して、その鏡が落ち、割れてしまった。
父は怒りっぽい人だった。目を三角にして怒る、と怖くてならなかった。けっこう些細なことでも怒るので、私は父がこわくてならなかった。

そのとき、叔母が、まあ、何々さんの形見の品を!と叫んだ。その何々さんがだれなのか、私は知らなかった。
父が座敷から現れた。目が三角になるか、どんな叱責をあびるのか、体罰はしない人だったが、些細なことでも怒る人だったので、もうこれだけの失策をして、どんなに怒られるのか、こわかった。
意外や、父は黙っていた。そして叔母に片付けを命じて、また座敷に戻った。

祖母に叔母が、そのあと、私に向かって、亡くなった先妻の形見なのに、と何度も何度も繰り返し文句をつけた。その時、母はどんな反応をしたか、記憶にない。
この事件のとき、姉は同居していただろうか?これも記憶にない。

小さいとき、姉を姉ともしらなかったこともあるし、ある日突然(でもないのだが)、嫁いでいったので、姉とのこれという記憶がない。
そして、不思議と父との思い出もないのだ。

この頃は、父のことも、母(先妻も後妻も)も、名前で呼んでいる。
親に対して、尊敬の念が亡くなったわけではないが、もう父の亡くなった年は超えているし、私は父に対して、あまり感情がないのかもしれない。

先妻の子である兄と長姉、そして後妻の子である次姉、私、弟、今5人の兄弟姉妹だが、とても仲がいい。というより、もういさかいをするような案件もなく、おだやかにそれぞれの家庭での生活のプラスアルファとして、兄弟姉妹がいる、状態だ。
死を近いものと考えたとき、生を得たときからのことを知りたい、というのも面白い現象だ。
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