SSブログ

Mariage pour tous

Mariageは結婚、pourはために、tousはすべて、つまりすべての人のための結婚を、ということになる。
これは、もう10年以上も前に、フランスで大きな運動のスローガンである。
すべての人、つまりLGBTの人たちにも結婚の権利を、という運動だ。

何年前になるのか、ある年、パリの代父の家に滞在していたときだ。
パリでこのMariage pour tousのデモがあるという。
代父はもう90歳という老人、とても保守的な人である。そして同じ建物の別の部屋に住んでいた孫は、ソルボンヌの修士課程に籍をおく学生がいた。

新聞でもテレビでも、このデモについてどんなに大がかりなデモになるか、と報道している。
朝食の場で、このデモに参加してみようかな?と言ってみる。
私の場合、旅行者の好奇心そのものだ。
孫が言った。僕も参加するんだよ、と。
びっくりした。私の参加は冗談だが、彼の参加表明は真剣な感じである。

孫が外出したあと、私は代父に、彼がデモに参加するのを認めるのか、と問うた。
老父は言った。これは個人の問題だ、彼は参加する権利があるし、彼にLGBTの傾向があることはわかっている。
そして父は付け加えた。自分もデモに参加する、と。
しかし、そのデモは孫と同じものではなく、これまでの家族の在り方を支持する、Mariage pour tousに反対するデモ、に参加するというのだ。

夕食の場、老父も孫もそれぞれデモに参加した、という。
反対の立場にあっても、なにも言わない。賛同も非難もなしだ。

その後、フランスでは同性婚も認められたのだろう。

あの時の、老人と若者の静かな態度が思い出される。激しい言葉のやりとりなどなく、相手の立場や性的嗜好を受け止めていた。

ところで、同性婚をいうとき、LGBTだけが出て、最後のQは省かれるのはどうしてなのだろう。
QはQueerあるいはQuestioningの略で、自身の姓自認や性的指向が定まっていない状態にある人や、あえて決めない人、のことだという。

あの孫は同性婚をしたのだろうか?5年前、代父の葬儀ミサに出たけれど、その時、特別話し合うこともなかった。
日本に来たいと言っていたけれど、コロナのせいもあるだろうが、なんの連絡もない。

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。