SSブログ

N分N乗方式

昨日のテレビで、国会の場面を見ていてがっかり、そして腹がたった。
自民党、国民民主党、維新、この3党の質問にそろって「N分N乗方式」という言葉が出ていたからだ。
これは所得税の課税方法の一つで、個々人にかけるのではなく、世帯の場合、一世帯を単位として全体に課税するシステム、だそうだ。
聞きなれない言葉が出てきたけれど、システムの解説を読み、またフランスで長く採用されている課税方式、ということに、なんだ!という思いが、それも腹立たしい思いがでてきた。

フランスでこの呼び方を聞いたことはない。
といっても、私の知識は、1995年あたりでストップしているので、現在では、フランスもこの呼び方を使っているのかもしれないが、私がフランスとつよくかかわっていた時、この課税方法は、Quotient familial(家族除数)と呼ばれていた。つまり、除数(割り算の下の数)を個ではなく、家族全体の数字にする、ということなのだ。
この税制、税金にうとい私にとって理解しがたいところもあって、その時代、大蔵省であったが、主計局の若手に教えを乞うたものだ。

大蔵省主計局には、それは頭脳明晰な人がいて、フランス留学経験者もいた。ENAというエリート官僚を育てる大学校に留学もし、フランスの税制にも詳しかった。
現議員の片山さつき氏もそういうキャリアを積んでいらした。
彼らがしっかりフランスのシステムを研究してきたはずなのに、なんで今頃まででててこなかったの?と、昨日は腹が立った。

国会での質問者は、フランスのこの税制こそが、フランスの出生率の高さをもたらした、と言っていた。
私はそのテレビ画面を見ながら、それだけじゃないよ、と叫んでいた。
フランスにはFamille nombreuseという言葉がある。大家族、つまり子供が4人以上いる家族のことだ。
子供に対する手当などももちろん1人から得られるけれど、4人以上いれば、その補助がけた外れに多くなる、また鉄道やその他の面で、割引が大きいとか、各種の援助があるのだ。
そもそもまだ当時は、カトリックの影響もあって、一世帯における子供の数は多かった。

当時すでに、ではないけれど、出産において、母親への休暇conge de materniteのほか、父親の休暇conge de paternite(2002年より)も新設されたし、いまや、もっと充実しているはずだ。
これらの休暇は権利であり、勤務先の都合でとれない、というような制約はつけてはいけないことになっていた。

もし、岸田首相が、異次元の(今は次元の異なると言い換えているけれど、言語上の違いはわからない)政策をとるのなら、もっと根本的に制度改革をしなければ、と思う。

当時、とくくると乱暴だが、フランスではIVG(intervention volontaire de grossesse)、これは妊娠中絶のことであるが、volontaireという言葉から自分の意思で、という意味が加わっている。それまでは単にavortementと呼ばれていた。そして人工妊娠中絶は違法だったのだ。
これを合法にすること、またあわせてmere celibataire 未婚の母の問題もあった。
結婚の形式の問題も浮上、Union libre, Concubinage, Cohabitationという呼び方は違うが、結婚という法的な手続きをとらず、ともに住む、つまり同棲をする、しかし、夫婦としての法的権利をどの範囲まで与えるか、というような諸問題、を改善していく動きがあった。

そして、このような自由な結びつきから生まれる子供の問題も浮上したが、それもほとんど正式な結婚による子供と変わらぬ保護が与えられるとなったのだ。

姓の問題については、フランスはとても保守的だ。男性の姓を名乗ることになる。
ただし、法的には生まれたときの姓を維持することになっていて、子供が生まれたとき、その子は父親の姓を名乗る。したがって、女性の姓は継続性がなく、希少な姓が消滅していく、というので、あえて結婚の手続きをしないカップルも多い。

選択性別姓制度も一つの方法だが、中国や韓国のように、夫婦別姓の制度を取り入れることも一つの方法だろうし、こういう選択しなくても別姓を維持する、という方法もあるではないか。

N分N乗方式にもそれなりの欠陥はあるだろう。しかし、この方法をとることで、103万円の壁や160万円の壁など、解決方法がみえるものもあるのでは?と税制に無知ながら、無知がゆえの提言をしたい。







nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。