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「土を喰らう十二ヵ月」を見る[

昨日、友人に誘われて映画をみた。
映画館で映画を見る、もしかしたら、今年初めてで最後ではないだろうか。
自慢ではないが、わが村には映画館なるものはない。これはお隣の軽井沢だっておんなじだ。

だいたい、佐久のシネコンへ行く。群馬県の前橋や高崎ではないのがちょっといびつなのだが。
邦画であることは承知したが、あとの情報、タイトル、主演俳優、あらすじ、はないままだ。

10時半上映、となると、ちょっと早出(9時では遅いかも)しなければならない。いろんな条件もからんで、普段は7時起きを6時に起きる。昔、映画は夜みるものだったけど、早朝起きというのも時代の変化?と自問する。

映画を見る前に得た情報は、主演が沢田研二であること、だけだった。
ほとんど白紙の状態でみることになる。
映画の初め、昔懐かしの松竹や東宝映画の華々しいイントレはない。独立系の映画らしい。
それで主演が沢田研二か、と納得いくようないかないような。

この納得いかない感じは最後まで続いた。
エンドロールをみて、初めてこの映画のストーリー原作は水上勉であることを知った。
そうなのか、主演の沢田が、幼いとき、お坊さん修行に出され、とか精進料理ばかり作ること、悟りきったような表情なこと、納得がいく。
タイトルの土を喰らう12か月というのは、どうも、水上勉の作品名らしい。
水上勉、なつかしい名前だ。この10年以上、彼の作品を読んでいない。松本清張はこの頃またブームになっているようだが。
長野県にある、水上勉の息子が経営している「無言官」には数回、足を運んだけれど、父親の著作を読みかえすことは、この10年以上していない。

このタイトルになんの記憶も呼び戻されないけれど、彼が体験した、田舎暮らしを書いたものなのだろうか。
長野の山村で暮らす日々を、淡々と描いている。毎日、精進料理だ。山野であれば、イノシシ、シカ、ウサギ、なにかしら野生の動物の肉が届くけれど、彼は自宅の菜園から得られる野菜を主に、山菜やキノコなど、自然の恵みで暮らしている。
それらの野菜やお米を調理する前の準備など、コメをとぐ場面、野菜を水洗いする場面が、水道からの水とそれを洗う手だけで、丹念に描かれる。

とても写実的な画面であるが、ときどき、おや、っと思わせる、映画だから仕方ないか、と思う場面もある。
大根を一度に5-6本抜いたり、山のキノコがえらくつやつやしていたり、おやおやだ。
ごはんはおかまで、おくどさんで炊くけれど、野菜などはおそらくプロパンであろう、丸いガス台で調理する。
暖房はどうなっているのか、囲炉裏があるけれど、それ以外はどうなっているのだろう。
そして、いくら素朴な生活とはいえ、仕事の原稿書きをランプでしている。ランプの明るさがどのくらいあるものか、ものの存在は確かめられても、細かいところまで見えないだろうに、それで原稿用紙に文字を書いていけるのか?

主演の沢田研二、とても淡々と演じているけれd、いかんせん、太りすぎだ。映画のなかでのような菜食であれば、あんなにしもぶくれした顔、そして下半身がずっくりむっくりとはならない。
彼がいかに演技しようと、あの風采は都会でならあり得るけれど、長野の山奥では無理だ。

彼の亡妻の母親が亡くなり、義弟夫婦から頼まれて、彼の家で葬儀が行われる。
村の衆があつまって、村のしきたりらしい通夜が営まれるのだが、とてもシンプルな生活をしているはずなのに、出るわ、出るわ、立派な漆の器が集まった人数分、どんどん出てくる。

田舎暮らしの12か月に、変化をつけるためか、京都で修行したお寺のお坊さん、彼がとても尊敬しているらしい、の娘さん(檀ふみが演じている)が訪ねてきた。
彼女に対してはお嬢さんと言っていたようだが、亡くなったその父親の奥さん、つまりは母親だが、その消息を聞く。その名前を呼ぶのだ。それはあり得ないでしょう、と思わずつぶやく。
その奥さんとなんらかの特別の関係でもあったの?
ふつう、お寺をあずかる僧侶の奥さんは、大黒さんと呼ばれるはずだ。

なんでそうなの?と思うようなポイントがたくさんあった。
しっかりチェックをしているだろうに、どうしてそんなにはしょっていくの?時代考察もあるし、衣装もそうだし、なかなか、完全にチェックされた映画とはならないのだろう。

映画館、シネコンというらしいが、を出て、友人に、水上勉の原作、読んでみなければ、というと、その人知らない、という。
水上勉を知っていて、沢田研二が主演で、長野の田園生活が見られて、というような要素で誘ってくれたのかと思えば、なんとはなしにスマホをいじっていて出てきた映画だという。

水上勉を知らない、これは時代、年代の差か、学校教育の差か、文学への興味の差か、などと思いながら、ランチへと席をうつした。
映画で、とても丁寧にたかれたごはんがおいしそうだったが、そのレストランでのごはんもおいしかった。私も少し丁寧にご飯をたくことにしよう。
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