SSブログ

新しき年の初めの初春の

「新しき年の初めの初春の今日降る雪のいや頻け吉事」は万葉集にある大友家持の歌である。
これを始めて知ったのは、もう40年も前のことになるだろう。当時、岩波書店の出版案内書「波」(月刊、無料)を受け取っていた。
その表紙の裏側のページに、和歌や俳句、詩などが書かれ、その解説が載っていた。

当時、短歌の結社に所属し、また書も習っていたので、この歌にはまった。年賀状に書くのになんとぴったりの歌だろう、というわけだ。
早速、書の先生に手本を書いていただき、その翌年は年賀状をこの歌で決めた。

百人一首のほかに空で言える、数少ない歌の一つである。
この歌を先週の水曜日、朝日新聞のなかに見つけた。
ピーター・マクミラン氏が詩歌翻遊という、詩や和歌を英語に翻訳して、翻訳の意や歌そのものの解説をしている記事だ。

待ってました!と喝采なのだが、疑問がいくつか残った。
英語については疑問もなにもない。原文についてである。
万葉集の原本を確認していないのだが、マクミラン氏は歌の最後の部分「いやしけよごと」のなかの「しけ」に「頻け」としている。
私は今までこの漢字をあてたのをみたことがない。「重け」とあてたのはみた。
「よごと=吉事」が重なって起きるように、ということで「重け」と書くのに疑問はなく、そのままに書いていた。

「頻け」を使ったのを見るのは初めてだ。マクミラン氏の記事には「頻く」は絶え間なく起こる、という意味があるとのこと。それに雪が降り敷く、を重ねて使っているのだという。
原文がどうなのかを見ればいいのだが、あいにく万葉集を持っていない。

次なる疑問:それは「年の初めの初春の」とあるのは、元日が立春日とも重なる格別の吉日であった、と書かれていることだ。
立春は2月初め、うるうの暦の場合はそういうことも起きるのだろうか。しかし、そんな先例を聞いたことがない。
それにこの歌の解説書で、こういう解説は初めて見る。

私は、「新しき」「年の初めの」「初春の」と3回同じような表現が重なるのも、歌の手法としての重なり、と解釈し、これだけ重ねて「吉事」に結んでいるのだ、と思っていた。
これだけ重なっても決して嫌みにならず、ごろの良さにすっかりほれ込んで暗記したのだ。

英語でみてみると、最初の部分は、On this New Year's Day whichi falls on the first day of spring,とあり、こうしてみると、元日が立春と重なっていると訳されている。

いづれにしてもおめでたさが重なって、この一年が期待にあふれるし、雪も歓迎という気分になる。歌を暗記するのに40年かかっているが、この英語訳、今年中に覚えられるだろうか。
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。